マンガ『バーテンダー』(2)

前回は『バーテンダー1巻』から3つのお話を紹介したが、備忘録的な意味も込めてもう少し紹介しておこう。
(紹介したいシーンの中からいくつか、かいつまんで・・・と思って書いたら、ずいぶん長くなっちまいました・・m(_ _)m )


バーテンダー 3 (ジャンプコミックス デラックス)

バーテンダー 3 (ジャンプコミックス デラックス)

〜〜『バーテンダー3巻』より〜〜
(佐々倉溜がBar東山というバーにヘルプで入ることとなった。東山は銀座の名バーテンダーの一人)

ジントニック
(佐々倉溜が出したカクテルが、若くして銀座でママをやっている女性客に気に入られず・・・)
東山「では代わりにこれぞバーの顔と言われる一杯をお作りしましょう」
銀座ママ「店の顔になるカクテル・・・それってマティーニ?それともオリジナルの何か?」
東山「まずはライムを絞り・・・
氷は2〜3個
ここにジン45mlを注ぎ
そしてトニックウォーターでフルアップ
最後に一度だけステア
ジントニックです」
銀座ママ「これが店の顔?」
東山「はい。
店によって使うジンの銘柄も違います。
ウチでは夏は冷やしたタンカレーを、
それ以外は常温のゴードンを
柑橘類はレモンかライムか
トニックウォーターソーダを加えたり、
ビターズを落とす場合もあります。
そして、味の決め手はトニックの苦味をどこまで生かすか。
この苦味は元々キナというインカの熱病の薬で、スペイン総督夫人のマラリアを治療したことをきっかけにヨーロッパに広まりました」
銀座ママ「元々は薬だったの?」
東山「ええ、日本で市販されているトニックウォーターはキナを使っていませんが・・・
それでもなぜトニックという名前が残っているのか。
多分英語のトニック(TONIC)に『元気をつける』という意味があるからでしょう」
銀座ママ「(一口飲む)うん・・・・
元々は薬だから元気づけるか・・・
こんなお薬だったらいくらでも飲めるわね」
東山「佐々倉くん・・・
ではどうしてジントニックが店の顔と言われるか分かりますか?」
佐々倉溜「今おっしゃったように単純なレシピなのにさまざまな味のバリエーションがあり
そこに店の個性を出しやすい」
東山「それじゃ50点。
大事なのはやはりトニックという言葉です。
お客様をどう元気づけるか・・・
そこに店のサービスの姿勢が現れるからだと私は思っています」
佐々倉溜「(店のサービスの姿勢?)」
東山「ジントニックは一杯目にオーダーされるお客様が多い。
その最初の一杯に何を込めるのか。
お客様は疲れているのか、
怒っているのか、嘆いているのか、
そして・・・・・・
何を期待してこの店のトビラを押したのか。
それに応えるのが・・・・・ 店の顔」

(※この続きのストーリーがまた面白いが、そこまで書けないので気になったら本を読んでください・・・ m(_ _;)m)


ヘミングウェイダイキリ
(上司に飲みに付き合わされて、自信をなくしていた若手サラリーマンが、忘れ物を取りに一人でBar東山に戻ってきた)
若手サラリーマン「せっかくですから、もう一杯だけ何かいただけますか」
佐々倉溜「かしこまりました!
では、バーテンダーの忘れ物を・・・」
若手サラリーマン「?」
佐々倉溜「氷を入れ・・・・
ラムにライムジュースとグレープフルーツジュース
最後にマラスキーノというチェリーリキュール少々
これをブレンダーでシャーベット状に・・・
どうぞ」
若手サラリーマン「これ・・・」
佐々倉溜「『ヘミングウェイダイキリ』です。
パパダイキリとかワイルドダイキリとも呼ばれていますね。
ヘミングウェイは砂糖を抜いてラムは通常の倍も入れたそうです」
若手サラリーマン「あのヘミングウェイもフローズンカクテルを飲んだんですかぁ・・・」
佐々倉溜「はい。フローズン・ダイキリを世界的に有名にしたのはヘミングウェイかもしれません。
1940年キューバに移り住んだヘミングウェイはすでに世界的に著名な作家でした。
毎晩のようにバー・エル・フロリディータに通ってはフローズン・ダイキリをダブルで12杯。
帰り道で飲むために同じ量を水筒に入れて持ち帰ったそうです」
(中略)
佐々倉溜「昼は釣りを楽しみ、夜はバーでフローズン・ダイキリを飲む。
きさくで陽気な作家をキューバの人たちは心から愛し、パパという愛称で呼んだそうです。
パパ・ヘミングウェイと。
でも本当は人生の中で一番苦しい時期だったそうです」
若手サラリーマン「苦しい時期?」
佐々倉溜「第一次大戦に参戦し、アフリカではハンティング。スペインでは闘牛に熱中した『行動する作家』が・・・
10年間まったく書けなくなってしまったんです」
若手サラリーマン「10年・・・ですか」
佐々倉溜「ヘミングウェイはもうダメだ。終わった・・・みんながそう言いました」
若手サラリーマン「辛かったでしょうね。その間何を考えて耐えていたんでしょうね」
(中略)
佐々倉溜「ヘミングウェイはフローズン・ダイキリについて『海流の中の島々』の主人公にこんなことを言わせています。
『緑が白くなった重いグラスを持ち上げ、氷が塊(かた)まって雪のようになったその下の透明な部分を見ていると、海を思い出した。
氷の塊まった部分は船の航跡、澄んだ部分は底が泥灰土の浅い海で、船首が切る水、そっくりの色だった。』」
若手サラリーマン「海を行く船か・・・」
佐々倉溜「そしてフローズン・ダイキリが、10年のスランプからヘミングウェイを救い、
老人と海』を書かせ・・・・
ピュリッツアー賞、ノーベル賞を受賞させ、復活のきっかけとなった」
若手サラリーマン「本当ですか!?」
佐々倉溜「・・・とバーテンダーなら思いたいところですね」


【メニューは心の中】
佐々倉溜「なぜバーにメニューがないか、あってもあまり出さないかご存知ですか?」
女性客「お酒をよく知らないお客様に酒の名前だけ並べても無意味だから」
佐々倉溜「それもありますが、メニューはお客様の心の中にあるからです」
女性客「心の中?」
佐々倉溜「たとえば同じウイスキー
常温ストレート、トゥワイスアップ、ロック、水割り、フロート、ミスト、と飲み方があり、
入れる氷、水、ステアの仕方で味が変わります。
そこに他の酒まで加えると・・・」
女性客「無限のメニューが生まれるわね」
佐々倉溜「その中からお客様の心を開き、今飲みたい一杯を探すのが
バーテンダーの仕事なんです」
女性客「だからメニューは心の中か・・」



バーテンダー 4 (ジャンプコミックス デラックス)

バーテンダー 4 (ジャンプコミックス デラックス)

〜〜『バーテンダー4巻』より〜〜

バーテンダーの仕事】
(中小企業の社長を引退した男性が、佐々倉溜の紹介したカクテル「マルガリータ」についてのエピソードに対して「宣伝のために作られたものだ」と皮肉を言った翌日、またBar東山を訪れた)
男性客「君は知っていたんでしょ。マルガリータのエピソードが明かされたのはコンクールの何十年も後だと。
つまり宣伝のためのでっち上げなんかじゃなかった」
佐々倉溜「1970年コンクールから30年近くたってからマルガリータが死んだ恋人の名前だったと取材に答えたそうです」
男性客「なぜ先日そこまで話さなかったんですか?
ボクが間違っていると」
佐々倉溜「バーテンダーは不思議な仕事です。
社長が新入社員に悩みを打ち明けることはありません。
でもバーではどんなお客様も、一人の人間に戻ります。
お客様は私のような若造に語りかけながら、
実はご自身の心や、ご自身の過去と会話をしている。
バーとはそういう場所なのかもしれません。
だから、バーテンダーの一番の仕事は
お客様の話を聞くこと。
お酒のエピソードなど、そのためのきっかけにすぎませんから」


バーテンダー (Vol.5) (ジャンプ・コミックスデラックス)

バーテンダー (Vol.5) (ジャンプ・コミックスデラックス)

〜〜『バーテンダー5巻』より〜〜
【手の動き】
佐々倉溜「本日もご注文はジントニックでよろしいですか?」
中年男性客「ああ」
佐々倉溜「ジントニックはシンプルなカクテルですが、
バーテンダーによって作り方はずいぶん違います。
私はまずジンと・・・
ライムを絞り・・・」
中年男性客「それだ!それは何のマジナイだ!?」
佐々倉溜「力一杯絞るとライムの皮の渋みが入るためです。
でもこのほうが動きが美しいという理由もあります」
女性客「動きが美しい?」
佐々倉溜「お客様が混んで忙しい時こそ大切なことなんです」
女性客「どうして?
そんなこと構わず、忙しいならすぐ作った方がいいのに」
佐々倉溜「お客様は自分のオーダーが来るまでバーテンダーの手元を見て時間を潰す。
それもバーの時間の大事な楽しみですから」
中年男性客「うむ・・・たしかにそうだな」
佐々倉溜「だからこそバーテンダーは何度も鏡の前で練習して
美しく素早い動きを身につけます。
でも・・・バーテンダーの全ての技術はお客様のためになければいけません。
素早くカクテルを作ることが出来れば
それだけお客様と会話する余裕が生まれますから」


バーテンダー 6 (ジャンプコミックス デラックス)

バーテンダー 6 (ジャンプコミックス デラックス)

〜〜『バーテンダー6巻』より〜〜
【シェイク】
(女性バーテンダー川上京子が、馴染みの客にカクテルを飲んでもらい、感想を言ってもらおうとしている)
川上京子「『ギムレット』です。
正直な感想を聞かせてください」
女性客「うーん、すっきりして美味しいと思うけど、何か欠けてるっていうか、
足りない気がするわね」
佐々倉溜「ちょっと失礼」(グラスを取り上げ、シェーカーにカクテルを戻す)
川上京子「何するんですか!?そんなことしたら・・・」
佐々倉溜(シャカ シャカ と、軽くシェイクする)
「これならどうでしょう」
女性客「色が違う!
さっきのはもっと透明だった気がする。
コク・・・(カクテルを飲む)
味も全然違う!
このギムレットは味がキリッとしてるのに
柔らかくしっとり舌にしみ込んでいく感じ。
これ飲んでみてください」(川上にグラスを渡す)
川上京子「は、はい
ゴク・・!
こ、こんなことって・・・・」
女性客「普通カクテルを振り直したら
味のバランスが崩れて不味くなるのに・・・」
川上京子「私のギムレットが足りなかったんですか?」
佐々倉溜「お客様の話の相手をしなきゃと思うと
つい手元がおろそかになります。
多分パーティーの席でもシェイクが足りなかった・・・
でも問題はそこじゃありません」
川上京子「?」
佐々倉溜「シェイクの目的は何か。
酒を混ぜ、冷やし、氷を溶かして加水しアルコール度を下げる。
そしてもうひとつ・・・
酒の中に空気を含ませ、
その空気を酒の中に留めること」
女性客「空気・・・確かにこのギムレットは舌触りがムースチョコレートみたいだもの」
佐々倉溜「ですが、空気以上にもっともっと大切なことが・・・
“イメージ”です。
シェーカーの中で酒はどう動き、どう氷にぶつかっているのか。
グラスに注いだ後はどう変化するのか。
そしてお客様の舌に触れ、どう喉を通っていくか・・・」
女性客「佐々倉さんのカクテルってそこまで考えて作ってるんだ」


〜〜〜〜〜〜〜

ホントは13巻までいろいろあるんだが、、、ココでギブアップ w(>_<)w
書いてみて思ったのは・・・
絵がないとあんまり面白くない!!!Σ( ̄ロ ̄lll)ガビーン (そりゃトーゼンだ!)
ということで、興味を持った人はアマゾンで買い込みましょう♪w