IFRS(国際会計基準)

たまにはこんなお堅い話題も・・・
久しぶりに本を読んだので、一応レビューしておこう。

IFRS 国際会計基準で企業経営はこう変わる

IFRS 国際会計基準で企業経営はこう変わる

最近、会計の世界では「IFRS」(アイファス=International Financial Reporting Standards)という言葉が「流行っている」。
簡単に言えば、EUを中心として発達してきた「国際会計基準IFRS)」を、日本とアメリカ以外の世界中の企業が採用し始めたことから、日本とアメリカも今までのように「コンバージェンス(convergence)」と言って自国の基準をIFRSに徐々に近づけようとしてきた流れから、一気にIFRSという基準をそのまま採り入れる「アドプション(adoption)」という流れに急激に変化している、というお話である。(当然「コンバージェンス」も継続して行われている。)
これが「流行り」で終わるか、上場企業をはじめとする多くの日本企業への重大なインパクトとなるかは、現状意見の分かれるところだが、おそらく数年以内に後者であることがはっきりするだろう。


本を読んでいてなるほどと思ったのは、日本やアメリカの会計基準を形作るコンセプトと、IFRSの土台となるコンセプトの違いである。
日米は新しい会計処理が生まれるのに合わせて細かいルール作りを繰り返し、非常に詳細まで規定された会計基準が存在するが(「ルール主義」)、IFRSはもともとEU各国の会計基準の違いを乗り越えようとする工夫から作り上げられてきたため、細かいルールを定めるのではなく、会計基準の概念を整理して原理原則だけを示し、そこから逸脱しない範囲での具体的な処理は各企業の判断に委ねる(「原則主義」)、という大きな違いがある。
従って、IFRSを導入した企業のCFOは、今までは自国の会計基準の規定に照らし合わせて適正な処理を事務的に行うというスタンスだったのが、会計処理の判断が微妙な案件ごとに経営陣でディスカッションをしながら実際の処理や解釈を定めていく作業が多く発生すると考えられる。
それだけ判断力やコミュニケーション能力も求められる仕事となってくるだろう。
また、この本の中ではほとんど触れられなかったが、IFRSの適用のもとでの新たな「粉飾」への懸念もある。さらに「原則主義」であるということは、企業間の財務諸表の「比較可能性」(個々の企業によって細かい会計処理が異なることになるので、それが場合によっては大きな数字の違いに繋がるかもしれない)についても様々検証が必要ではないかと思われる。


この本は、会計の知識がなくてもスラスラ読める分かりやすいまとめ方をしているので、IFRSの概要を掴むにはいい本である。
しかし(読めば誰でもわかるので注意するというほどのものではないが、)良くも悪くも「会計事務所(監査法人)の立場」に立った「希望観測的」な内容であるので、その前提を理解した上で読めば役にも立つし、会計事務所の次のビジネスの狙いが分かって面白いと感じた。